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小説「涙をこえて。」(4)

僕 「あの、一から説明してください」佳子「一から説明すると長くなるんだけど」僕 「じゃあ、十からでもいいです!」佳子「あは(笑)面白いね。じゃあ、十からいこうか」僕 「ふざけないでください!だって、どういう状況なのか、   僕だけ全然わかってないじゃないですか!」佳子「ごめんね。」僕 「どうしてなんですかあ」佳子「じゃあ、十から話すね」僕 「やっぱり、一からお願いします」佳子「それだと長くなる」僕...
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小説「涙をこえて」(3)

僕  「切り換えって、何ですか」佳子 「ほら、ロマンスカーは、登山線に入ると、    一気に周りの雰囲気が変わるでしょ。    そんな場面」僕はつい、「みわちゃんに会う前に、いつも心の切り換えをしています」「切り換えて、心のクサクサがバレないようにするのが大事なので」  みたいな話をしてしまいそうだったが、 すんでのところで、それをやめた。佳子さんに、みわちゃんの話をしても仕方ない。いや、みわちゃ...
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小説「涙をこえて。」(2)

佳子 「こらっ、女の子のこと、ジロジロ見ちゃいけないんだよっ」僕  「ああっ、失礼しましたっ」そしてまた、佳子さんは笑ってくれた。この空気、23年前と、まったく同じだった。他愛ないことで、怒ってみたり、笑ってみたり。ただそれだけのことが、高校生みたいなことが、僕にものすごい幸福感を与えてくれていた。僕はなんて幸運なんだろう。23年も経って、こんな時間を過ごせるなんて。いや、神様が、23年前に戻して...
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小説「涙をこえて。」(1)

「人を好きになることの意味がわからない」と悩む人には、いつもこの小説をおすすめしています。「涙をこえて。」  石井寿平成28年8月27日 土曜日。また、夜になってしまった。「きょうも、おつかれさまでしたーっ」僕は、石井という。職業、気象予報士。明日使うコメントを書き終え、僕は勤め先の「坂の上テレビ」を出た。帰りのバスで、スマホを見るけど、もう飽きた。世の中は世の中を知りすぎている。つながりすぎてい...