(前回の話はこちら)

「小じわ」の話の続きです。
「こうするといい」というポイントを、あと7つお話しします。

⑩紫外線対策を日焼け止めだけに頼るのは危険
先程も言ったように、紫外線対策と言うと真っ先に思い浮かぶのは日焼け止めでしょう。日焼け止めを塗れば日焼けしないし、塗らなければ日焼けするというのが一般的な認識のようですが、そう簡単なものではありません。
日焼け止めにかかれているSPF数値にそのトリックがあります。SPFの数値について、まずは正確な知識を持っていただきます。SPFとは“Sun Protection Factor(紫外線防御指数)”の略で、何も塗らない時と比べて、日焼けするまでの時間を何倍に伸ばせるかを示す数値です。つまりSPF 2であれば、日焼けするまでの時間を単純に約2倍に伸ばせると言う計算です。
ところがここで1つ、注意点があります。SPFの数値は、1平方センチメートルの皮膚に対して2ミリグラムの日焼け止めを塗ったときの効果として測定されています。塗る量がそれより少なければ効果は、当然下がり、塗る量が半分になると効果は、実際には約4分の1まで下がります。
顔全体に規定通りに塗るとすると、500円玉程度の量の日焼け止めが必要になるのです。平均的に女性はこの3分の1から4分の1程度しか塗ってないと言われ、それでは効果は10分の1以下に下がってしまうのです。

規定通りになったとしても、2時間おきに塗り直さないと効果が下がっていきます。しかし500円玉大の量を2時間おきに塗るなど、現実的ではありません。SPF数値の高いものを見ることだけで紫外線対策が万全だと思うのはこういう理由で間違いなのです。
それではどうすれば良いのでしょうか?
結論から言うと、顔にはパウダーファンデーションを塗ることが1番のオススメです。
パウダーファンデーションの粉は紫外線を跳ね返す作用があるので、きちんと塗ればこれだけで充分な紫外線対策になります。最近のパウダーファンデーションは水に強いので、汗をかいてもこすらずハンカチで抑えるようにすれば、効果は下がりません。
日差しが強い所に出るときは、厚塗りをすればいいのです。特にゴルフなどかなりの日焼けが予想される場合は、見た目は悪くてもひたすら祭りに厚塗りにしていけば、きちんと紫外線を防ぐことができます。
ボディーに関しては衣類でガードするのが1番です。ジャケット、UV手袋、ストールなのできちんと覆うことが最強のUV大対策です。特にデコルテや肩、手などのシミは、できてしまうと意外に気になるものです。ボディーの方が皮膚が厚いため、一旦シミができてしまうと、レーザー治療などをしても顔よりも取りにくいと言う厄介な現実があります。結婚式の前などになって、肩や背中を出すため、慌ててシミ・シワ治療に走る人が多いのですが、一朝一夕に取れるものではないので、日ごろから気をつけてください。
でも「顔は厚塗り、体も完全防備では、暑苦しいしおしゃれじゃない」と、思う人も多いでしょう。そこから先はご本人の価値観の問題です。よく紫外線対策はどこまですべきかと質問されますが、シワ・シミはできてはいけないと言うものではないので、誰もが紫外線対策を万全にすべきだと言うものでもありません。
水疱ができるほどの日焼けを繰り返したり、スポーツで年中真っ黒になるほど焼いてしまったりすれば皮膚がんの発症リスクが高くなりますが、日常生活の紫外線は、美容的には問題でも医学的には問題では無いのです。
将来のシワ・シミを防ぐことが大事か、今のおしゃれが大事か。ご自身の価値観で考えてみてください。

⑪額のシワは刻まれるととれにくいので、より注意する
額の横ジワがくっきりとして消えなくなってくると、気になるものですよね。額の横シワは、目立つ人と目立たない人の差が激しいようです。
予防としてはまず、紫外線対策でしょう。
先程も説明したとおり、パウダーファンデーションが最も紫外線カットに有効なので、まずは活用してください。額は皮脂が多くファンデーションが崩れやすいので、まめにあぶらとり紙で皮脂をとってパウダーを重ねていきましょう。さらに、シワ対策と皮脂対策を重ねて、ビタミンC誘導体配合の化粧水も使ってください。
額の皮膚はコラーゲン繊維が密で、その繊維の束が表情の動きでよれてしまうこともシワの原因です。カーペットを繰り返し折りたたむと、シワの部分の線が薄くなって周りの部分と段差がついてしまいますが、額のシワはそれに近い状態です。
繊維がよれないためにマッサージも取り入れていきましょう。手で行っていいですが、強く引っ張ったりはしないように。美容液などをつけて、指先で円を描くように慣れていきましょう。超音波マッサージ機を当てるのも有効です。額のシワは頑固なので、美容皮膚科の治療でもなかなか簡単には消せません。

⑫自分の肌に合う化粧品を選ぶ
「私は肌が敏感なので、どんな化粧品を使ったらいいか自分でもわかりません。何を使えばいいでしょう?」という質問を、よく患者さんから受けます。
しかし何を使えば安全かということは、皮膚科医にもわからないのです。それは使ってみて判断するしかありません。
当然個々の肌は違いますし、化粧品の成分も様々です。敏感肌用の化粧品もありますが、商品によって内容に幅もあります。よって、肌と化粧品のマッチングはやってみないとわからないというのが実際です。
また、そもそも”化粧品かぶれ”とは何でしょうか。
忘れていけないのは、化粧品は化学物質だということです。肌に化粧品をつけたときに、肌の上で起こっている事は紛れもない化学反応です。かぶれるかどうか、また効果があるかどうかと言うことも全て化学的に考えないといけません。
科学的に言うと化粧品かぶれは、含まれている何かの成分に反応することです。何に反応するかは人によって違うので、使ってみないとわかりません。かぶれの原因となるのは悪い成分や強い成分と言うわけではなく、どんな物質でも、人によってはかぶれます。
そばアレルギーの人がそばの入ったものを食べるとじんましんを起こしたりしますが、アレルギーでない人には無害であり、そばが悪い食べ物とは言えません。それと同じで、かぶれの原因になったからといって、その物質が悪い物質とは言えないし、かぶれた化粧品がひどいとか悪い化粧品だとか言うわけではありません。
かぶれにくい化粧品を選ぶ目安を挙げるとしたら、それは成分が少ないものです。含まれる成分の種類が多いほど、その中の何かにかぶれてしまう可能性は高くなるからです。成分表示を見て、そこにある成分の数が少ないものを選ぶと比較的安全です。また意外なことかもしれませんが、植物エキスを含むものはかぶれやすい傾向があります。
植物エキスは化学構造が複雑だからで、それはオーガニックのものでも同じです。敏感肌の人は、植物性をうたうものや成分表示上に植物エキスがたくさん書かれてあるものは避けたほうがいいかもしれません。

⑬法令線・マリオネットラインは化粧品より美顔器のケアがおすすめ
頬がたるんで下がってくると、口の両側に法令線というシワができます。法令とは文字通り「法の道」を指しますが、人の道というような意味で使われます。歩き方がまっすぐでないと体が歪み、顔にも歪みが現れくる…。つまり、顔の縦ジワは体の歪みを反映していると言う、東洋的な考えに基づく名称なのです。
法令線は厳密にいうと、シワというよりもたるみです。
頬全体を支えている皮膚やその内側の組織が加齢でたるんで、頬の脂肪などを支えきれなくなって下がってくるのです。よって法令線の部分だけにシワのケアをしてもあまり効果的とは言えません。
お気に入りの薄手のバックに重たいものを詰め込みすぎて、下垂してシワが入ったとします。法令線はそれに似ています。中の脂肪の重みを支えきれなくなって皮膚が垂れ下がり、シワができるのです。
口角より下にできた縦の線をマリオネットラインといいますが、これも法令線と同様で、頬のたるみによってできた線です。これらを改善するためには、頬全体をリフトアップすることが必要です。
今回はシワについてなので、詳しくはまたの機会にいたしますが、化粧品だけではその深さまで到達できないので、美顔器を使ったケアがおすすめです。

⑭洗いすぎに注意する
上記で書いてきたように、シワの原因は皮膚の乾燥からくるものもあります。その乾燥の原因が「現代人のいきすぎた清潔志向」が発端であるという説もあるのです!
よくテレビや雑誌で常に「清潔」が叫ばれていますよね。アトピー性皮膚炎の予防もまずは清潔、ニキビも汗も虫刺されも、対策としてはまずは皮膚を清潔に、と言う具合に、清潔と言う事は毎回登場してきます。
もちろん不潔にして良いことは何もありません。ただし、今の日本で、病気になるほど皮膚を不潔にしている人などまずいないのです。
ほとんどの人が毎日入浴して石鹸で体を洗っています。それでも皮膚トラブルに悩む人は「まずは清潔に」と言われると、『まだ洗い足りないのかしら』と思ってさらに洗ってしまう人が多いのです。
実際には、1日1回石鹸で全身を洗うだけでも洗い過ぎになります。普通に3食食べているだけでカロリーの取りすぎになる人が多いのと同じです。
洗いすぎるということは、実は肌を不潔にします。肌の表面は皮脂膜で覆われていて、その皮脂膜が抗菌活性を持っており、悪玉菌の繁殖を抑えているのです。人間の皮膚は、皮脂とそこに住む善玉菌で覆われています。それ洗ってとりすぎると、善玉菌の住むところがなくなるために悪玉菌が繁殖し、不潔になるのです。
つまりむやみに洗えば、清潔になるというわけではありません。皮膚は生きているのですから、部屋の掃除とは訳が違います。洗いすぎれば肌は乾燥し、善玉菌を失しなって悪玉菌が繁殖し、干潟のようにひび割れた角質の隙間からさらにほこりや菌が侵入してしまいます。
人間の体は、角質とそれを覆う皮脂幕で構成された、わずか20ミクロンと言う奇跡のような薄い角質で守られています。それを石鹸で毎日ゴシゴシあれば、奇跡のバリア機能も当然破壊されます。
お風呂で体を洗いすぎて乾燥肌になる、メイク落としを入念にやりすぎて肌が敏感になって荒れる、何か触るたびに手を洗って、洗いすぎで手荒れを起こしてかえって不衛生になる…。そういう方が毎日続々と皮膚科を受診しています。
繰り返しますか肌は生きています。汚れた鍋を洗うように洗ってはいけません。肌の仕組みを知り、節度を持って扱うことができるのか乾燥から守るコツです。

⑮コラーゲンを増やして、力を取り戻す
15番目は、毎日のケアというより、スペシャルケアの内容になります。
先ほどから何度もご紹介しているように、シワの主な原因は真皮のコラーゲンが減って肌の弾力がなくなることからでした。
そこで、コラーゲンを増やすことで弾力を取り戻すことが、シワのケアにつながるのです。
コラーゲンを増やす成分として、レチノールやビタミンC誘導体などがあります。これらは化粧品に配合されているので、それらを日々のスキンケアに取り入れると良いでしょう。例えばレチノール配合の目元用美容液、ビタミンC誘導体配合の化粧水などがお勧めです。
シワは乾燥だと思い込んで、クリームを塗りこんで保湿しようとする人がいますが、それではシワは改善されないでしょう。シワは一見干し椎茸のように、水でふやかせば伸びそうに思えてしまいますが、肌のシワは乾物とは違います。
どちらかと言うと、靴の履きじわに近いものです。同じところが繰り返し折りたたまれることで、繊維が傷んで、戻らなくなるのです。
ただし、化粧品のケアだけで、できてしまったシワが消えるところまではなかなか望めません。シワの進行を遅らせるものと心得てください。
できた目元のシワをどうしても治したい場合、専門の病院でポツリヌス注射やレーザー治療なのが必要でしょう。

⑯顔の小じわに効く医薬品を取り入れる
顔の小じわに効く医薬品をご紹介します。
女性の肌と身体は、女性ホルモンによる影響を大きく受けるという特徴があります。それによって、生理周期で微妙な変化が起こったり、また初潮から閉経まで、そしてその後へとライフステージそれぞれのゆっくりとした大きな変化も描きます。
40歳を過ぎた頃から女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量は徐々に減ってきます。エストロゲンが減ると、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の構成も減るので、たるみやシワが顕著になると言われています。
真皮を元気にするにはビタミンCやB群、レチノールやポリフェノール等の抗酸化成分が有効です。
これだけたくさんポイントがあるのは、人によって治し方がさまざまだから、です。
自分にあった治し方が見つかるといいですね。大丈夫です。応援しています。
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